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倫理基準

私たちが目指すのは、動物たちのよりよい生活の実現であり、人と動物のよりよい関係である。それらは、一時的なものではなく、持続可能なものでなければならないと考える。活動や関係に関わる誰かが犠牲になっていれば、持続可能にはできない。
私たちは、動物を含めそれに関わる誰かが犠牲になるようなアニマル・ケアとトレーニングを容認しない。私たちは、よいアニマル・ケアとよいアニマルトレーニングの実現には、動物、ケア・ギバー、トレーナーおよび関わるその他の動物のプロフェッショナルの間のフェアで安全な関係が必要と考える。
私たちは、私たち人が動物たちに何らかの行動を求める場合、それを彼らにとっても利益があるものにする。また、私たちは、私たち人が気づきにくい動物たちの苦痛を科学的に理解し、軽視したり、放置したり、増加させるようなことはしない。
私たちは、私たち人の動物たちへの誤解や決めつけを解き、正の強化と建設的アプローチを核とする行動変化の科学と戦略に基づく知識と技術を用いて、動物により安全でより親切なケアとトレーニングを提供する。
私たちは、動物に教え、動物をケアするための、科学、戦略、スキルを学び続ける。しかし、それだけでは十分ではない。例え、同じレベルの知識やスキルを持っていても、倫理が違えば、選択する戦略やスキルは変わる。
適切な選択をするために、また、動物に関わる人として、動物にも人にも信頼されるために、明確な高い倫理基準を持つ必要がある。

私たちはケア・ギバーである

私たちがケアする動物たちは、人という、自身とは異なる動物種に管理され、その動物種にとってではなく、人という動物種にとって都合のいい環境と関わりの中で、暮らしていかなければならない。それは、動物たちにとっては、不自然なことであり、不快や苦痛を伴うものである可能性がある。彼らを管理・飼養することや、彼らと関わることを選択したのは、私たちである。彼らではない。
「動物たちは、私たちが提供可能な最大限のケアを受けるに値する(Ken Ramirez)」。私たちは、動物たちが心身ともに、安全で、快適に生きられるよう、できる限り手伝うべきである。
私たちは、飼養や管理をする動物のケア・ギバー(ケアの提供者)である。私たちの役割は、ケアの提供であり、その動物と、周囲の人や動物、そのすべての心身の安全と健康を守ることである。

アニマル・ケアの基盤となる4つの柱

私たちは、Ken Remirez氏が提唱する「Four Cornerstones of the Foundation of Animal Care(アニマル・ケアの基盤となる4つの柱)」を理解し、これに賛同し、アニマル・ケア・プランの評価、検討、設計および提供の際の基準として採用する。

アニマル・ケアの基盤となる4つの柱(Ken Ramirez)

  • 健康管理 - 獣医療プログラム
  • 栄養 - 食べ物とビタミン
  • 環境 - 社会的構造、接触、関わりを含む
  • 行動のマネジメント - トレーニングとエンリッチメント
行動のマネジメントは、獣医療や栄養と同じく、その動物の生涯に渡って提供するものである。
「Four Cornerstones of the Foundation of Animal Care(アニマル・ケアの基盤となる4つの柱)」よいアニマルケアの4つの柱は、現在動物福祉のアセスメントで用いられている「Five Domains Model(5つの領域モデル)」と同じ視点を持つ。
5つの領域とは、(1)栄養、(2)環境、(3)健康、(4)行動、および(5)精神状態で、5つ目の領域の精神状態に、最初の4つの領域が影響を与えるため、4つの領域のネガティブまたはポジティブな主観的経験を生じさせる要因に焦点を当てて評価が行われる。

行動のマネジメント

「トレーニングとエンリッチメント(Ken Ramirez)」は、よいアニマル・ケアに欠くことのできない要素である。
エンリッチメントは、環境を変え、向上させることで、行動的な選択を増やし、人が介入しない環境において、その動物がしている行動をする機会や、その動物が持っている能力を使う機会を提供することによって、動物の福祉を向上を目指すもの。
「トレーニングは、贅沢でするものではなく、よいアニマル・ケアの重要なコンポーネントである(Ken Ramirez)」「トレーニングは、犬(動物たち)に、私たち(人)の社会の中で、安全に暮らす方法を教えることである(Ken Ramirez)」。「学習者が、自分自身の行動を、うまくコントロールできるように手伝うこと(Susan Friedman, Ph.D.)」である。
トレーニングを提供する本当の目的は、よいアニマル・ケアを提供である。生活の中で起こるストレスを少なくし、リラックスを拡大させることが目的である。トレーニング中も、動物がリラックスして、行動しているかどうかを重視する。
私たちは、トレーニングを「(環境の)マネジメント」「ティーチング」「メンテナンス」コンポーネント(要素)に分けて考える。3つのコンポーネントとエンリッチメント、それぞれのプランを設計、提供することによって、刺激や行動を、その動物にとっていいものにし、動物たちが、成功し続けられるように手伝う。
ここで言う、動物たちの成功とは、動物がリラックスして、行動し、その結果として、その個体がそのとき望む結果を獲得することを指す。

トレーニングの3つのコンポーネント

  • マネジメント - 実行してほしい行動を繰り返しやすく、実行してほしくない行動をやりにくくするための環境を整え、提供する
  • ティーチング - 実行してほしい行動をシェーピング(形成)し、実行できるようにするための環境を整え、提供する
  • メンテナンス - 教えた実行してほしい行動が起こり続けるようにするための環境を整え提供する

アニマル・トレーニングの第一の理由

私たちは、Ken Remirez氏が提唱する「Primary Reasons for (Animal) Training and Secondary Reasons for (Animal) Training((アニマル・)トレーニングの第一の理由と第二の理由)」を理解し、これに賛同し、アニマル・トレーニングの評価、検討、設計および提供する際の基準として採用する。

(アニマル・)トレーニングの第一の理由(Ken Ramirez)

  • 身体的活動(の機会の提供)
  • 精神的刺激(の提供)
  • 協力(協働)行動(を教える)

(アニマル・)トレーニングの第二の理由(Ken Ramirez)

  • エンターテイメント(で求める行動を教える)
  • 作業動物(に求める行動を教える)
  • スポーツ(競技会等で求められる行動を教える)等
「第二の理由が、第一の理由になると、動物の福祉が損なわれる可能性がある。
反対に、第一の理由が、達成されていると、動物たちは、より幸福になり、より健康になり、教え手とともに取り組むことへの彼らの意欲が高まることによって、トレーニングがしやすくなり、トレーナーはうまく自分の仕事ができるようになる(Ken Ramirez)」。
協力(協働)行動は、動物の身体的安全と健康を維持するための、マネージメントやハンドリング、ケアを、その動物にとって快適なものにするために、教える行動である。それによって、動物とケア・ギバーの双方の安全と快適さが向上する。

建設的アプローチ

私たちは、Israel Goldiamond教授が提唱する「Constructional Approach(建設的アプローチ)」を理解し、これに賛同し、トレーニング・プランを設計する際の基準として採用する。 建設的アプローチは、新たなレパートリーの構築により、問題を解決しようとする試み。問題となっている行動を除去することにフォーカスする病理的(除去的)アプローチに代わる、問題解決方法にフォーカスするアプローチである。 レパートリーとは、その個体が実行できる行動や、獲得した知識やスキルを意味する。 建設的アプローチは、次の4つのステップで構成される。
  1. どんな行動を実行してほしいか? - 目標行動を決める
  2. 今、実行できる行動はなにか? - その学習者(その動物)の現在のレパートリーの中から、目標行動シェーピング(形成)の元にする行動を決める
  3. 元にする現在のレパートリーから、目標行動へと、どうやって変えていくか? - ステップやクライテリアを決める
  4. 目標行動の達成まで、取り組み続けられるようにするには、どうすればいいか? - トレーニングに参加しつづけ、行動が起こり続けるようにするための強化子を決める
トレーニングプランを考えるときだけではなく、トレーニングセッションを開始する前にも、建設的アプローチで考えることで、そのときのその動物(学習者)の状態、そのときその動物(学習者)が置かれている状況に合った、常にその動物(学習者)にカスタマイズされた、その動物が成功し続けられる(行動し、その動物にとっていい結果を得られ続ける)トレーニングを提供することができる。
また、建設的アプローチに基づいて取り組むことによって、そのとき実行できる行動が、最初のクライテリアとなるため、初めから行動を強化することができる。
私たちは、建設的アプローチに基づき、正の強化と先行事象のアレンジ、適切なクライテリアの設定と調整によって、エラーレス・トレーニングを提供し、動物たちの行動を支援する。
ここで言うクライテリアとは、正の強化子を提供する基準のことを指す。

行動は、その行動をしている動物にとっては、財産である

行動は、直面している問題に対処するための手段である。実行される行動は、その行動をしている人や動物にとっては、生き残りのためや置かれた状況に対処するための、重要な問題解決の手段である。
問題解決の手段を多く持っていれば持っているほど、生き残りやすく、安心でき、暮らしやすくなる。行動は、その人や動物にとっては、財産である。
私たちは、動物たちの管理の仕方や、動物たちへの関わり方、トレーニングの仕方を選択することによって、動物たちの生き残りと、快適な暮らしのためのツールである行動を増やすことができる。
私たちの目的は、動物たちのレパートリーを増やすことで、動物たちの暮らしをよりよくすることである。問題解決のための代替行動を教えることで、動物たちがより快適に、より安心して暮らせるように手伝う。

機能分析

私たちは、動物や行動にラベル(レッテル)を貼らない。私たちは、客観的な証拠に基づかない、勘や印象による、行動の理由の決めつけをしない。
私たちは、行動分析に基づいて、行動を理解する。
問題となっている行動の改善に取り組む場合は、客観的なデータを集め、行動と環境の関係を分析し、その行動の機能を調べることから始める。これは、その動物が経験していることを、人、あるいは、個人としての認知のバイアスを掛けずに、理解するためである。
健康や栄養状態に問題がないかを獣医師の診察により確認し、生活環境、日々の活動と休息の状況、周囲の人や動物との関わり方などを調査し、その動物のニーズや、その動物が直面している困難について理解する。
そのうえで、行動のマネジメント(エンリッチメントとトレーニング(マネジメント、ティーチング、メンテナンス))を改善することで、その動物が直面している困難を取り除いていく。

行動修正手続きのヒエラルキー

私たちは、Susan Friedman教授が提唱する「Hierarchy of Behavior-change Procedure - Most Positive, Least Intrusive Effective Intervention(行動修正手続きのヒエラルキー - もっとも建設的で、もっとも侵入的ではない、効果的な行動介入)」を理解し、賛同し、トレーニングにおいて用いている戦略、あるいは、用いようとしている戦略について検討する際の基準として採用する。
行動は、環境への反応である。他者の行動は、直接操作することはできないが、環境を操作することによって、行動は変えられる。
環境を操作し、他者の行動を変える試みを、行動介入という。もっとも侵入的ではないというのは、もっとも強要的ではない、最大限のコントロールを学習者である動物に提供するという意味である。
このヒエラルキーは、どの戦略まで使っていいのかを示すものではなく、自分がしようとしていることや、自分がしていることが、どの戦略であるかを確認し、より建設的でより侵入的ではない方法はないかを考え、選択できるようにするためのものである。

行動改善

人が問題と呼ぶ動物の行動は、動物からのSOSであり、彼らが問題のある環境に置かれていることを意味する。私たちは、環境を改善することで、行動を改善する。動物の行動が問題になっている場合、その動物もその動物の近くにいる人(ケア・ギバー)も何かを変え、新しいことを学ぶ必要がある。
動物の行動が問題となっている場合、その行動を必要とさせ、維持している環境的要因を見つけ出し、それらを解決・改善する。望ましくない行動を未然に防ぎ、望ましい行動を形成し、望ましくない行動を望ましい行動に置き替える。
行動は実行されれば、強化を受ける可能性がある。また、繰り返すほど熟練し、簡単に実行できるようになる。問題になっている行動は、繰り返させないことが、もっとも重要かつ最優先で行うべきことである。
しかし、望ましくない行動を実行しづらい環境を提供する(環境の)マネジメントにより、活動や刺激へのアクセスが(さらに)制限される。それによって、社会的関わりや遊びなどの精神的な刺激、身体的活動、強化を受ける機会が減り、動物の生活の質が低下する。
私たちは、マネジメントを増やす場合には、精神的な刺激、身体的活動、強化を受ける機会を減らさないようにする、あるいは、それらを増やし、動物の生活の質を維持または向上させるために、適切なエンリッチメントを選定・提供する。
問題になっている行動に対しては、マネジメント(先行事象のアレンジ)とエンリッチメントの見直しと提供が、ティーチングよりも優先される。よって、対処の順序は以下のようになる。
  1. 情報・データ収集
  2. 行動の機能分析
  3. 動物の身体的健康と栄養状態の確認・改善・確保(身体的健康、栄養の改善・確保)
  4. 動物のストレスの原因となっている事柄の除去・低減。十分な休息の確保(生活環境全体の改善)
  5. 問題になっている行動を未然に防ぐための先行事象のアレンジ(行動のマネジメント - (環境の)マネジメント)
  6. 精神的刺激、身体的活動、強化を受ける機会の提供(行動のマネジメント - エンリッチメント)
  7. 問題になっている行動の代わりに実行してほしい行動の選定とその形成(行動のマネジメント - ティーチング)
  8. 望ましい行動の維持・増大のための環境の提供(行動のマネジメント - メンテナンス)
私たちは、ケアギバーができることとできないことを確認し、動物にとってもケアギバーにとっても実行可能な現実的なプランを設計する。また、ケアギバーの行動と動物の行動のマネジメントの知識とスキル向上支援も行う。

安全の確保

ケアやトレーニングのサービスを提供するときは、それに関わるすべての人と動物の安全確保を常に最優先とする。身体的安全だけではなく、精神的安全についても同じである。すべての人には自分自身も含む。
プロテクティド・コンタクト、セミプロテクティド・コンタクトを積極的に活用し、動物にとっても人にとっても安全なトレーニング環境を用意する。

嫌悪刺激の取扱い

私たちは、動物が恐怖や不安に感じている刺激への感情反応や行動を変えるためのトレーニングのときなど、トレーニング環境で嫌悪刺激やその動物が嫌悪に感じる可能性のある刺激を扱わなければならないときがある。私たちは、動物の苦痛を最小限にしながら、最大のトレーニング効果を得るために、次のような基準に従って扱い、判断する。
  1. 嫌悪刺激または嫌悪刺激の可能性のある刺激をトレーニングで用いる場合は、他に方法がないあるいは他の方法よりもその刺激を利用した方が、圧倒的に効果的に求める行動を引き出せる場合に限る。また、その刺激を、好ましいことを予測させる刺激もしくはその動物が簡単に無視できる刺激へと変化させるためのプランを立てる必要がある。
    目標行動、あるいは、新たな学習を生むために、必要最小限の刺激レベルになるようにする。それは、他の刺激に対して、新たなネガティブな感情反応の古典的条件づけを起こさない刺激のレベルである。よって、その動物はその刺激以外のものにリラックスして集中できているはずであり、それを確かめながらトレーニングを進める。
  2. 動物がいつでも、自らその刺激から十分に離れられる環境もしくはその刺激との関わりを断つことができる環境の中で、トレーニングを行う。
  3. 強化子を惜しみなくふんだんに提供する。
  4. 生活、トレーニング・セッションの両方において、その嫌悪刺激に触れる時間を極短時間にし(例:60分のトレーニング・レッスン中、嫌悪刺激に関わる時間は5分以下にする。そのとき以外、通常の生活ではその嫌悪刺激に関わらないようにする)
  5. その嫌悪刺激に触れる機会よりも、圧倒的に正の強化を受ける機会が多いトレーニング・セッション環境、生活環境を用意する。
  6. 常に、動物の行動を注意深く観察し、不快・苦痛を示すボディランゲージ(ストレス・シグナルの継続または増大)や行動(逃避・回避行動、行動の潜時の増大、行動のスピードの低下など)が見られた場合は、即座にその刺激の使用やトレーニング・セッションを終了し、刺激レベル(距離、強烈さ、数、暴露時間)および他の環境について検討し、改善、調整を行う。必要に応じて、行動のマネジメントあるいはティーチングプランを見直す。トレーニング・セッションをすぐに再開せず、しばらく時間を空ける。数日空けるのが望ましい。

自分の能力を過信しない

私たちは、自分自身の知識とスキルの不足や過大評価、自分自身への過信が、どれだけ危険かを知っている。私たちは、私たちがケアする動物たちの安全と福祉を守るためには、学び続けること、知識と技術を高め続けること、もっとも侵入的ではなく、もっとも建設的なアプローチを選択することが必要であることを知っている。
私たちは、自分が考えた先行事象のアレンジと正の強化を用いたプランで、目標行動を形成することができなかった場合、代替行動の分化強化や消去などのより侵入的な選択する前に、次のことを実施する。
  • 身体的健康と栄養状態に問題がないかについて再度調べる
  • 自分が収集した情報、実施した機能分析に見落としはないか、設計した行動のマネジメントのプランと、自分自身の行動やスキルを含めた提供している環境の中に、改善すべきことはないかを考える
  • 先行事象のアレンジや正の強化を利用する他の方法やアイデアはないかを考える
  • 必要な場合は、同じ倫理基準と科学的知識を持ち、正の強化に基づく実践的なティーチングスキルを持つ、他のプロフェッショナルに協力やアドバイスを求める
私たちは、プロフェッショナルとして依頼を受けたものが、自分自身のスキルを超える案件であった場合、その案件に関するスキルを持つ、同じ倫理基準と科学的知識を持ち、正の強化に基づく実践的なティーチングスキルを持つ、他のプロフェッショナルを紹介するか、その人とチームを組み、取り組む。

私たちの使命・信念・行動

私たちは、動物たちのよりよい暮らしと、人と動物のよりよい関係を支援することを使命として、情報、サービスまたは製品を提供する。私たちは、私たち人が気づきにくい動物たちが経験している苦痛を見逃したり、軽視したりしないために、彼らの行動と福祉について、客観的事実に基づき科学的に理解する。実際に起きている観測可能なことに基づいて、動物たちが経験していることを科学的に検討・計測・分析・評価・理解する。
完璧な人も完璧な方法も存在しない。よりよい選択は必ず存在すると考え、それまでに自分自身がしてきたことについて検討し、科学的かつ倫理的によりよい選択について考え、学び、取り入れ、自分自身を改善しつづける。
私たちは、よいアニマル・ケアの提供のため、動物たちの身体的精神的な不快・苦痛を減らし、彼らが人の社会の中で心身ともにより安全に、より豊かに暮らせるように支援することを第一の目的として、行動のマネジメント(エンリッチメントとトレーニング)を検討・設計・提案・提供・実施する。動物の行動が問題になっている場合は、その行動の機能分析を行い、その動物が必要としている環境を理解する。その動物が置かれている環境(身体的健康、栄養、生活環境、行動のマネジメント)を詳しく調べ、動物が抱えている苦痛・困難の原因を見つけ出し、それらを改善することに尽力する。私たちは、動物が置かれている環境を変えることで、動物の行動を変える。
私たちは、動物を変えようとしたり、行動を消したりすることを目的とした提案や選択を行わない。なぜならば、そうした考え方は科学的にも倫理的にも合理的ではないからである。動物が置かれている環境を改善し、適切な先行事象のアレンジと正の強化によって、望ましくない行動の代わりに実行できる望ましい行動をその動物がうまく実行できるようになるまで教えるために、また、望ましい行動が繰り返され続けるようにするために環境を検討・設計・提案・提供する。
私たちは、私たちが使う言葉が自分自身の見方や考えにも、他の人の見方や考えにも大きな影響を及ぼし、動物たちの扱いや生活環境に影響を与えることを理解している。よって、動物たちを決めつけることや誤解することに繋がる言葉や、動物たちに対する強要的な選択・行動に繋がる言葉を使わない。具体的には、例えば「コマンド」「しつけ」「○○させる」「慣らす」「与える」といった言葉である。こうした言葉は、私たち人が、動物たちを自分たちとって都合いい社会と関わりの中で生きていかなければならない環境に置いていることや、動物たちを手伝い、助ける立場にあることを忘れさせ、動物たちに対して強要的な選択や関わりを正しいことのように感じさせ、動物たちが置かれている環境を彼らの視点から理解することからも、動物たちに対するより安全でより親切な関わりと選択からも遠ざける。
私たちは、相手が人であっても、動物であっても、相手の努力に敬意を払い、正の強化を提供し合うことによって生まれる双方向のフェアで健康的な関係の構築を望み、努めます。動物の資源を管理するという立場を利用し、動物の資源の掌握し、動物の行動をコントロールしようとすること(Nothing in Life is Freeやトレーニングのときのみ食べものを提供すること)にも、そうした背景の元で行う正の強化のトレーニングにも同意しない。人種、出身、セクシャリティ等その人の属性による差別をしない。
私たちは、正の弱化の随伴だけではなく、負の弱化や消去の随伴、退屈さといった私たち人間が気づきづらい動物たちが経験している不快・苦痛を無視したり、軽視したりしない。またそれらを利用した手法をトレーニングの名の元に利用・推奨しない。
私たちは、動物たちのレパートリー(その動物が実行できる行動)を拡大し、彼らが自分自身の行動をうまく使い、問題に対処できるようにすることを目的にトレーニングを提供する。動物の行動が問題になっている場合は、その行動を必要とさせている環境を調べ、改善し、望ましくない行動の代わりにその動物が実行可能な行動を検討・選定し、それを動物にとっても望むものになるように環境やトレーニングプランを検討・設計・提案・実施する。
私たちは、建設的アプローチに基づく、先行事象のアレンジと正の強化の適切な利用したエラーレス・トレーニングを提供・実施し、動物たちが成功(行動していい結果を獲得すること)を重ね続けながら、新しい行動やスキルを習得できるよう環境を設計・提案・実施する。
動物の行動を教えたり、変えたい場合は、動物だけではなく、その動物のケアギバー(管理者・飼養者)も新しい行動とスキルを習得する必要がある。なぜならば、動物ケアギバーは、動物の行動に影響を与えている環境の提供者・選択者であり、なおかつ、その存在と行動がその環境の大きな要素でもあるからである。動物の行動支援・トレーニングのサービスを提供する場合は、動物とその動物のケアギバーの両者が新しい行動とスキルを習得できるように支援する。
私たちは、私たちが望まない動物の行動に対して、「行動が起きたら罰する」「行動が起きたらペナルティを課す」という正の弱化、負の弱化もしくは消去を利用する方法が、人と動物の両者の行動、精神的経験、人と動物との関係に与える不利益について科学的に理解している。よって、望ましくない行動に対しては、その行動の実行を未然に防ぎ、その行動の代わりに実行する望ましい行動をエラーレスで習得できる環境を検討・設計・提案・提供する。
私たちは、望ましくない行動を未然に防ぐ環境によって、その動物が経験する刺激と実行できる行動の制限が増し、強化(行動によって望む結果を獲得する経験)が減ることを理解している。よって、望ましくない行動を未然に防ぐ環境を提供する場合、それによって損なわれる精神的刺激、行動(活動)および強化を補填するためのエンリッチメント(エンパワーメントを含む)も同時に設計・提案・提供する。
私たちは、行動を実行する動物自身または周囲の人や動物の心身の安全もしくは福祉を脅かすことに繋がる行動を動物に求めることや教えることには同意しない。
私たちは、「私たち人から見て間違っていると思う動物たちの行動(エラーや問題行動と呼ぶ動物たちの行動)」も、彼らが置かれている環境への反応であることを理解している。動物たちの行動はすべて、私たちが彼らに提供している環境によって生まれ、繰り返されているものであり、動物たちがするすべての行動は、提供している環境が適切かどうかを知り、改善するべき環境を見つけるための貴重な指標・情報であることを理解いる。よって、動物たちがしている行動は、動物たちが経験していることの理解と彼らに提供する環境の再設計に役立てる。
私たちは、動物たちの行動を変えることに取り組む場合、行動変化において効果的であるという科学的合理性だけではなく、動物たちの福祉向上に貢献するという倫理的合理性も重視します。
動物の行動のマネジメントにおいて、エンパワーメント(動物たちが自分自身の行動とそれに紐付く結果を選択する自由)を可能な限り提供します。
私たちは、動物の行動やトレーニングについて説明したり、提案を行う場合、客観的根拠を示します。自分の経験や主観に基づく意見を伝えたり、提案を行う場合は、情報の受け手が個人的意見であることを区別できるように説明を行います。
私たちは、動物の行動の責任を動物に押しつけるような選択や言動はしません。私たちは、主観、想像や理想を挿入して、動物たちの行動を解釈するようなことはしません。動物たちや彼らの考えを決めつけたり、彼らにラベル(レッテル)を貼ったりすることはしません。
私たちは、自分の動物の行動およびトレーニングに対するアイデア、選択、行動について、常に科学、倫理、動物がしている行動に照らして合理的で適切かどうかを考えます。客観的視点や新しい知識と技術を取り入れるため、積極的に他のプロフェッショナルから学び、また評価や助言、サポートを受けます。

認定資格者

BAW ACADEMYおよばBAWedu株式会社の認定資格者は、この倫理基準に記載されていることに従うものとする。この倫理基準に反する行動が疑われた場合は、調査を行い、倫理基準違反が明白となった場合は、取得済みの認定資格および将来の資格受験資格を剥奪する。BAW ACADEMY、BAWedu株式会社および他の認定者の信頼を損ねるような行為であった場合は、その資格者に相当の損害賠償を求める。
※BAW-ECT-KAまたはBAW-MET-Amb.認定者がこのページ内に記載している事柄にに反するまたは反する可能性がある行為(情報提供、発言または行動)をしていることを直接確認または経験された場合は、こちらのフォームからその詳細をご連絡ください。
改定:2023年4月16日、6月10日。動物に対する最高レベルのケアとコミットメント確保のため。