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倫理基準

私たちが目指すのは、動物たちのよりよい生活の実現であり、よりよいアニマル・ケアとトレーニングの提供である。

私たちは、行動変化の科学と戦略についての知識、正の強化に基づいて行動を教えるティーチング・スキルを用いて、動物にケアとトレーニングを提供する。

私たちは、動物に教え、動物をケアするための、科学、戦略、スキルを学び続ける。しかし、それだけでは十分ではない。例え、同じレベルの知識やスキルを持っていても、倫理が違えば、選択する戦略やスキルは変わる。

動物たちにとって、よりよく、適切な選択をするために、また、動物に関わる人として信頼されるために、明確な高い倫理基準を持つ必要がある。

私たちはケア・ギバーである

私たちがケアする動物たちは、人という、自身とは異なる動物種に管理され、その動物種にとってではなく、人という動物種にとって都合のいい環境と関わりの中で、暮らしていかなければならない。それは、動物たちにとっては、不自然なことであり、不快や苦痛を伴うものである可能性がある。彼らを管理・飼養することや、彼らと関わることを選択したのは、私たちである。彼らではない。

動物たちは、最大限のよいアニマル・ケアを受けるに値する。私たちは、動物たちが心身ともに、安全で、快適に生きられるよう、できる限り手伝うべきである。

私たちは、飼養や管理をする動物のケア・ギバー(ケアの提供者)である。私たちの役割は、ケアの提供であり、その動物と、周囲の人や動物、そのすべての心身の安全と健康を守ることである。

アニマル・ケアの基盤となる4つの柱

私たちは、Ken Remirez氏が提唱する「Four Cornerstones of the Foundation of Animal Care(アニマル・ケアの基盤となる4つの柱)」を理解し、これに賛同し、アニマル・ケア・プランの評価、検討、設計および提供の際の基準として採用する。

アニマル・ケアの基盤となる4つの柱(Ken Ramirez)

  • 健康管理 - 獣医療プログラム
  • 栄養 - 食べ物とビタミン
  • 環境 - 社会的構造、接触、関わりを含む
  • 行動のマネージメント - トレーニングとエンリッチメント
行動のマネージメントは、獣医療や栄養と同じく、その動物の生涯に渡って提供するものである。

行動のマネージメント

「トレーニングとエンリッチメント(Ken Ramirez)」は、よいアニマル・ケアに欠くことのできない要素である。

エンリッチメントは、環境を変え、向上させることで、行動的な選択を増やし、人が介入しない環境において、その動物がしている行動をする機会や、その動物が持っている能力を使う機会を提供することによって、動物の福祉を向上を目指すもの。

「トレーニングは、贅沢でするものではなく、よいアニマル・ケアの重要なコンポーネントである(Ken Ramirez)」「トレーニングは、犬(動物たち)に、私たち(人)の社会の中で、安全に暮らす方法を教えることである(Ken Ramirez)」。「学習者が、自分自身の行動を、うまくコントロールできるように手伝うこと(Susan Friedman, Ph.D.)」である。

トレーニングを提供する本当の目的は、よいアニマル・ケアを提供である。生活の中で起こるストレスを少なくし、リラックスを拡大させることが目的である。トレーニング中も、動物がリラックスして、行動しているかどうかを重視する。

私たちは、トレーニングを、「マネージメント」「ティーチング」「メンテナンス」コンポーネントに分けている。3つのコンポーネントとエンリッチメント、それぞれのプランを設計、提供することによって、刺激や行動を、その動物にとっていいものにし、動物たちが、成功し続けられるように手伝う。

ここで言う、動物たちの成功とは、動物がリラックスして、行動し、その結果として、その個体がそのとき望む結果を獲得することを指す。

トレーニングの3つのコンポーネント

  • マネージメント - 実行してほしい行動を繰り返しやすく、実行してほしくない行動をやりにくくするための環境の設計と提供
  • ティーチング - 実行してほしい行動をシェーピング(形成)し、実行できるようにするための環境の設計と提供
  • メンテナンス - 教えた実行してほしい行動が起こり続けるようにするための環境設計と提供

アニマル・トレーニングの第一の理由

私たちは、Ken Remirez氏が提唱する「Primary Reasons for (Animal) Training and Secondary Reasons for (Animal) Training((アニマル・)トレーニングの第一の理由と第二の理由)」を理解し、これに賛同し、アニマル・トレーニングの評価、検討、設計および提供する際の基準として採用する。

(アニマル・)トレーニングの第一の理由(Ken Ramirez)

  • 身体的活動(の機会の提供)
  • 精神的刺激(の提供)
  • 協力(協働)行動(を教える)

(アニマル・)トレーニングの第二の理由(Ken Ramirez)

  • エンターテイメント(で求める行動を教える)
  • 作業動物(に求める行動を教える)
  • スポーツ(競技会等で求められる行動を教える)等
「第二の理由が、第一の理由になると、動物の福祉が損なわれる可能性がある。

反対に、第一の理由が、達成されていると、動物たちは、より幸福になり、より健康になり、教え手とともに取り組むことへの彼らの意欲が高まることによって、トレーニングがしやすくなり、トレーナーはうまく自分の仕事ができるようになる(Ken Ramirez)」。

協力(協働)行動は、動物の身体的安全と健康を維持するための、マネージメントやハンドリング、ケアを、その動物にとって快適なものにするために、教える行動である。それによって、動物とケア・ギバーの双方の安全と快適さが向上する。

建設的アプローチ

私たちは、Israel Goldiamond教授が提唱する「Constructional Approach(建設的アプローチ)」を理解し、これに賛同し、トレーニング・プランを設計する際の基準として採用する。

建設的アプローチは、新たなレパートリーの構築により、問題を解決しようとする試み。問題となっている行動を除去することにフォーカスする病理的(除去的)アプローチに代わる、問題解決方法にフォーカスするアプローチである。

レパートリーとは、その個体が実行できる行動や、獲得した知識やスキルを意味する。

建設的アプローチは、次の4つのステップで構成される。
  1. どんな行動を実行してほしいか? - 目標行動を決める
  2. 今、実行できる行動はなにか? - その学習者(その動物)の現在のレパートリーの中から、目標行動シェーピング(形成)の元にする行動を決める
  3. 元にする現在のレパートリーから、目標行動へと、どうやって変えていくか? - ステップやクライテリアを決める
  4. 目標行動の達成まで、取り組み続けられるようにするには、どうすればいいか? - トレーニングに参加しつづけ、行動が起こり続けるようにするための強化子を決める
トレーニングプランを考えるときだけではなく、トレーニングセッションを開始する前にも、建設的アプローチで考えることで、そのときのその動物(学習者)の状態、そのときその動物(学習者)が置かれている状況に合った、常にその動物(学習者)にカスタマイズされたトレーニングを提供することができる。

建設的アプローチに基づいて取り組むことによって、そのとき実行できる行動が、最初のクライテリアとなるため、初めから行動を強化することができ、正の強化と先行事象のアレンジを利用することにフォーカスして、エラーレス・トレーニングを提供し、目標行動をシェーピング(形成)していくことができる。

ここで言うクライテリアとは、正の強化子を提供する基準のことを指す。

行動は、その行動をしている動物にとっては、財産である

行動は、直面している問題に対処するための手段である。実行される行動は、その行動をしている人や動物にとっては、生き残りのためや置かれた状況に対処するための、重要な問題解決の手段である。

問題解決の手段を多く持っていれば持っているほど、生き残りやすく、安心でき、暮らしやすくなる。行動は、その人や動物にとっては、財産である。

私たちは、動物たちの管理の仕方や、動物たちへの関わり方、トレーニングの仕方を選択することによって、動物たちの生き残りと、快適な暮らしのためのツールである行動を増やすことができる。

私たちの目的は、動物たちのレパートリーを増やすことで、動物たちの暮らしをよりよくすることである。問題解決のための代替行動を教えることで、動物たちがより快適に、より安心して暮らせるように手伝う。

機能分析

私たちは、動物や行動にラベル(レッテル)を貼らない。私たちは、客観的な証拠に基づかない、勘や印象による、行動の理由の決めつけをしない。

私たちは、行動分析に基づいて、行動を理解する。

問題となっている行動の改善に取り組む場合は、客観的なデータを集め、行動と環境の関係を分析し、その行動の機能を調べることから始める。これは、その動物が経験していることを、人、あるいは、個人としての認知のバイアスを掛けずに、知るためである。

健康や栄養状態に問題がないかを獣医師の診察により確認し、生活環境、日々の活動と休息の状況、周囲の人や動物との関わり方などを調査し、その動物のニーズや、その動物が直面している困難について理解する。

そのうえで、行動のマネージメント(エンリッチメントとトレーニング(マネージメント、ティーチング、メンテナンス))を改善することで、その動物が直面している困難を取り除いていく。

私たちは、環境改善により、行動を改善する。

行動修正手続きのヒエラルキー

私たちは、Susan Friedman教授が提唱する「Hierarchy of Behavior-change Procedure - Most Positive, Least Intrusive Effective Intervention(行動修正手続きのヒエラルキー - もっとも建設的で、もっとも侵入的ではない、効果的な行動介入)」を理解し、賛同し、トレーニングにおいて用いている戦略、あるいは、用いようとしている戦略について検討する際の基準として採用する。
行動は、環境への反応である。他者の行動は、直接操作することはできないが、環境を操作することによって、行動は変えられる。

環境を操作し、他者の行動を変える試みを、行動介入という。もっとも侵入的ではないというのは、もっとも強要的ではない、最大限のコントロールを学習者である動物に提供するという意味である。

このヒエラルキーは、どの戦略まで使っていいのかを示すものではなく、自分がしようとしていることや、自分がしていることが、どの戦略であるかを確認し、より建設的でより侵入的ではない方法はないかを考え、選択できるようにするためのものである。

自分の能力を過信しない

自分自身の知識とスキルの不足や過大評価、自分自身への過信が、どれだけ危険かを、私たちは知っている。私たちがケアする動物たちの安全と福祉を守るためには、学び続けること、知識と技術を高め続けること、もっとも侵入的ではなく、もっとも建設的なアプローチを選択することが必要であることを、私たちは知っている。

私たちは、自分自身が考えた先行事象のアレンジと正の強化を用いたプランで、目標行動を形成することができなかった場合、代替行動の分化強化や消去などを選択する前に、次のことを実施する。
  • 身体的健康と栄養状態に問題がないかについて再度調べる
  • 自分が収集した情報、実施した機能分析に見落としはないか、設計した行動のマネージメントのプランと、自分自身の行動やスキルを含めた提供している環境の中に、改善すべきことはないかを考える
  • 先行事象のアレンジや正の強化を利用する他の方法やアイデアはないかを考える
  • 必要な場合は、同じ倫理基準と科学的知識を持ち、正の強化に基づく実践的なティーチングスキルを持つ、他のプロフェッショナルに協力やアドバイスを求める
私たちは、プロフェッショナルとして、依頼を受けたものが、自分自身のスキルを超える案件であった場合、その案件に関するスキルを持つ、同じ倫理基準と科学的知識を持ち、正の強化に基づく実践的なティーチングスキルを持つ、他のプロフェッショナルを紹介するか、その人とチームを組み、取り組む。

よりよい方法を探し続ける

誰にでも改善の余地はあり、よりよい方法は探し続けている人にしか見つけられない。私たちは、学び続け、よりよい方法を探し続ける。

科学的に合理的で、動物たちに対して、より親切で、よりわかりやすい方法やスキルがあれば、それを取り入れ、実践する。

私たちは、自分自身を改善し続けることで、動物たちによりよいケアとトレーニングを提供していく。